懸垂(チンニング)は、背中を中心に、上半身を効果的に鍛えられる種目です。
逆三角形の、カッコイイ上半身を作る効果がある筋トレ種目です。
一方で、背中の筋肉は意識しづらい筋肉であり、正しい懸垂を指導できるトレーナーは多くありません。
また、負荷が大きく、初心者や女性は懸垂ができないこともあります。
この記事で、プレズ<Plez>がオススメする背中に効かせる懸垂のやり方、そして懸垂が出来るようになる方法を紹介します!
この記事は、科学的な知見とトレーナーや医師への指導経験も持つ、プレズ<Plez>のコンサルタントが作成しました。
(ダイエットの結果には個人差があります)
1.懸垂(チンニング)の筋トレ効果
懸垂(チンニング)は、背中を中心に、多くの筋肉を一度に鍛えられる効果的な種目です。
この1種目で、引く力を発揮する上半身の筋肉を、全て鍛えることが出来ます。
その中でも、メインで鍛えられるのが、広背筋という背中の大きな筋肉です。
ここの筋肉を大きくすることで、広い背中と逆三角形の上半身を作れます。
後ろから見た場合はもちろんですが、正面から見た場合も、逆三角形のラインになります。
男性がカッコイイ体を作るだけでなく、女性も広背筋を適度に鍛えることで、くびれを強調したラインを作れます。
広背筋はカッコイイ体を作れる一方、意識がしづらい筋肉です。
懸垂をしても、腕や肩周りの筋肉ばかり使って、広背筋に効いていないこともあります。
筋トレの上級者やトレーナーでも、「肩甲骨を寄せるように意識すると広背筋に効く」など、間違った認識の人もいます。
広背筋を意識できないのは、筋肉が見えないことに加えて、広背筋の働きをしっかり認識していないことが大きな原因です。
広背筋の働きを知って、正しいフォーム・意識で懸垂を実践すれば、カッコイイ体を作ることができます。
2.懸垂で使う広背筋の働き
広背筋は意識がしづらい筋肉ですが、コツをつかめば、誰でも広背筋に効かせる懸垂が出来ます。
そのために、広背筋の働きを知っておきましょう。
広背筋は、背中から腕に走っている筋肉です。
背中から始まり、上腕の肩に近い所に付いている筋肉です。
脇のすぐ後ろを通っているのが、広背筋です。
広背筋の働きは、上腕を引くことです。
上腕を前から後ろに引くときや、上から下に引くときに使う筋肉です。
懸垂では、上腕を上から下に引くために広背筋を使います。
ただ体を上げるのではなく、上腕を引くことを意識すると、広背筋に効かせられます。
広背筋に効かせるためには、「背中で引く」とよく言われますが、正確に言うと、「背中で上腕を引く」なのです。
上腕を下ろす力で体を上げるようにするのが、広背筋を使うコツです。
3.懸垂で鍛えられる筋肉
懸垂によってメインで鍛えられる筋肉が、広背筋です。
そして、懸垂では、広背筋以外にも多くの筋肉を一度に鍛えられます。
僧帽筋・菱形筋・大円筋といった背中の筋肉、肩の三角筋の後部、上腕二頭筋・上腕筋・腕橈骨筋といった腕の筋肉、そして腹筋も鍛えられます。
3.1懸垂で背中を鍛える
懸垂では、広背筋以外の背中の筋肉も、効果的に鍛えられます。
● 僧帽筋
僧帽筋とは、背中の上部にある広い筋肉です。
懸垂では、僧帽筋の下部を使います。
僧帽筋の下部は、肩甲骨を寄せる働きをします。
肩甲骨を寄せる力を意識しすぎると、広背筋に効かなくなるので、上腕を下げる力をメインで使うようにしましょう。
● 菱形筋
菱形筋は、僧帽筋の下にある筋肉です。
僧帽筋下部と同様、肩甲骨を寄せる働きをします。
菱形筋は肩甲骨を上に上げながら寄せる働き、僧帽筋下部は下げながら寄せる働きをします。
そのため、懸垂では僧帽筋下部の方をよく使います。
● 大円筋
大円筋は、広背筋のすぐ上にある小さい筋肉です。
広背筋と同じく、上腕を引く働きをします。
懸垂では、大円筋の他にも、肩甲骨周り・肩周りの複数の筋肉を使います。
3.2懸垂で腕を鍛える
懸垂では、上腕二頭筋も効果的に鍛えることが出来ます。
上腕二頭筋以外にも、上腕筋・腕橈骨筋といった腕の筋肉を鍛えることが出来ます。
これらは、ヒジを曲げる役割をする筋肉です。
懸垂をする時は、これらの筋肉が、ヒジを曲げて体を上げる働きをします。
懸垂は、アームカールと同じぐらい上腕二頭筋を鍛えることが出来ます。
3.3懸垂で腹筋も鍛えられる
あまりイメージがないかもしれませんが、懸垂で腹筋も効果的に鍛えられます。
例えばハンギングレッグレイズのように、腹筋の収縮・ストレッチを繰り返すわけではありませんが、懸垂では体の姿勢を維持するために腹筋を使います。
腹筋を全く使わないと、点線のように、お腹~脚にかけてだらんと垂直に立ってしまいます。
懸垂をする時は、腹筋の力で腰~脚を持ち上げ、姿勢を保っています。
4.効果的な懸垂のやり方
それでは、懸垂の正しいやり方・フォームを紹介します。
広背筋に効かせる正しいフォーム・効果的な回数に加えて、使う部位や負荷を調整できるバリエーションを紹介します。
4.1懸垂の正しいフォーム
● 上腕を下げる力で体を上げる
懸垂で一番大事なのは、広背筋をメインで使うことです。
そのために、上腕を下げる力で体を上げるようにしましょう。
ヒジを曲げる力や肩甲骨を寄せる力で体を上げると、広背筋をあまり使わなくなります。
肩甲骨を寄せたり、腕の力を使うこと自体は大丈夫ですが、広背筋の力をメインで使って体を上げましょう。
● 体や足を振って、反動をつけない
体や足を振ると、反動を使えるので、負荷を減らしてラクに上げることが出来ます。
広背筋にしっかり効いているなら問題ありませんが、反動を使うとフォームが荒くなり、あまり広背筋を使っていないことがよくあります。
また、初めから反動ばかり使うと、変なフォームが身に付くこともあります。
ヒザを少し曲げて足をクロスさせておき、反動を使わないようにすれば、広背筋を意識しやすくなります。
負荷が大きすぎる場合、【6.懸垂ができない場合の筋トレ】で紹介する、負荷を減らす方法がオススメです。
体や脚を振って反動をつけるより、効果的に広背筋を鍛えることが出来ます。
● 肩関節を抜かない
下ろした時に、肩周りの筋肉の力を抜いてしまうと、肩関節のかみ合わせが外れてしまいます。
これ自体は正常な動きでケガではありませんが、これを繰り返すと、肩を痛めることがあります。
下ろした時は、完全に力を抜いてぶら下がるのではなく、肩周りの筋肉に力を入れ、肩関節のかみ合わせを保つようにしましょう。
● 手幅を広げすぎない
上級者のトレーニング動画や画像では、このようにかなり手幅を広げたものがあります。
手幅を広げると、負荷が増えます。
初~中級者には負荷が大きすぎたり、手首・ヒジ・肩を痛める原因にもなってしまいます。
負荷が足りていれば、手幅を極端に広げる必要はありません。
肩幅かそれよりも少し開くぐらいで、効果的に筋肉を鍛えられます。
4.2懸垂の効果的な回数・セット数
懸垂は、他のトレーニングと違い、負荷が調整しにくい種目です。
そして、腕立て伏せやクランチと違い、自重だけでもかなりキツイ種目です。
限界の回数が10回以下の場合、チェーンベルトなどで加重をする必要はありません。
10回→8回→5回→3回などのように、自重で出来る回数でセットを重ねていけば大丈夫です。
セット数は基本4セット、4セットがキツければ3セットが効果的です。
「5回以下のレップ数だと、筋力は向上しても筋肥大はしない」と言われることもあります。
しかし、低回数でも、しっかり筋肉を使っていれば筋肉は成長していきます。
根拠論文:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12436270
10回以上できる場合は、チェーンベルトなどを使って少し加重する方が、筋肉を追い込みやすくなります。
10回以上できても、しっかり筋肉を使えば筋肉は成長します。
ただ、回数が増えてくると、最後の数回がかなりキツくなります。
そのため、高負荷でやる方が筋肉を追い込みやすく、効果的な筋トレを実践しやすくなります。
4.3懸垂のバリエーション
懸垂は、主にグリップの違いで、さまざまなバリエーションがあります。
ブリップを変えるだけで、使う筋肉や負荷が変わります。
● 基本のフォーム(プルアップ)
順手で、肩幅より少しだけ広めにバーを握りましょう。
広背筋や腕の筋肉をバランスよく使うことが出来ます。
● ワイドグリップ
順手で、グリップ幅を広げてバーを握ります。
ワイドグリップで行うと、広背筋の上部をよく使います。
通常の懸垂よりも負荷が大きく、関節への負担も増えますので、筋力が十分ついてから行いましょう。
● 逆手(チンアップ)
逆手でバーを握ると、広背筋の下部と上腕二頭筋をよく使うようになります。
広背筋の下部は外側を走る筋肉なので、ここを鍛えると、逆三角形の上半身を作れます。
どちらかというと、広背筋の上部が背中の厚み、下部が幅を作ります。
チンアップは肩幅ぐらいの狭めのグリップ幅になるので、負荷は軽くなります。
● パラレルグリップ
専用のバーを使った懸垂です。
腕をバランスよく鍛えることが出来ます。
器具によって、グリップ幅に差があります。
グリップ幅が狭いと広背筋の下部、広いと上部をよく使います。
ジムによっては、バーに取り付けるアタッチメントもあります。
● バック・プルアップ
広めの順手で握り、バーの前に体を上げます。
腰~脚を腹筋で持ち上げず、腕~背中の力だけで体を持ち上げるので、負荷が上がります。
通常の懸垂に比べて、広背筋下部の使用が増えます。
5.懸垂の器具・チンニングスタンドは必要?
懸垂を行うには、設備が必要です。
ジムだと、ワイドグリップに合わせて斜めになったバーや、パラレルグリップなどがあり、トレーニングの幅が広がります。
自宅用のチンニングスタンドもあります。
自宅にスペースがあれば良いですが、かなり場所を取るので、あまりオススメではありません。
近所に公園があれば、鉄棒で実践できます。
ジムは民間と公営の2種類があり、公営のジムだと、1回数百円とお得に利用できることもあります。
6.懸垂ができない場合の筋トレ
懸垂は自重でもかなり負荷が大きく、初心者や女性だと、1回もできないことがあります。
そこで、懸垂のコツと、懸垂ができるようになるトレーニング方法を紹介します。
6.1懸垂のコツ
順手で手幅を取った懸垂ができない場合、肩幅ぐらいのグリップを試してみるのがオススメです。
グリップ幅を狭めると、負荷が小さくなります。
また、順手と逆手を両方試してみれば、どちらかで出来ることもあります。
通常は、逆手が上がりやすいグリップです。
肩幅のグリップで、順手・逆手の両方でできない場合、負荷を下げたトレーニングをすれば、筋力をアップして懸垂が出来るようになります。
6.2負荷を下げた懸垂
通常の懸垂ができない場合、プレズ<Plez>では、まず「つかみ懸垂」で筋力を上げることをオススメしています。
ジャンプしてバーをつかみ、その勢いを利用して体を上げます。
ジャンプする勢いだけで体を上げず、広背筋の力も使って体を上げましょう。
広背筋の力をメイン、ジャンプの力を補助程度のイメージです。
そして、上半身の力を使って、ゆっくり下ろします。
これを繰り返しましょう。
この方法で、懸垂で使う筋力が向上します。
筋肉が大きくなることによって筋力を上げるには、時間がかかります。
しかし、トレーニングを始めてすぐは、神経の発達によってどんどん筋力が向上します。
この神経の発達による筋力の向上により、すぐに懸垂が出来るようになることもあります。
また、ダイエットで体脂肪を落とし、体重を減らして負荷を軽くするのも1つの方法です。
ダイエットをするには、食事のカロリーを抑えることです。
「懸垂にダイエット効果がある」という情報もけっこう目にしますが、実際はほとんどダイエット効果がありません。
筋トレは実働時間が短いので消費カロリーが少なく、筋肉を付けて上がる基礎代謝はわずかだからです。
ダイエットは、食事を変えてカロリーを抑えることが効果的です。
6.3斜め懸垂
自重での懸垂ができない場合、斜め懸垂もオススメです。
斜め懸垂とは、脚をついて行う懸垂です。
懸垂と同じく、広背筋をメインに、背中や腕の引く筋肉を鍛えられます。
体を倒す角度によって負荷を調整でき、筋力にあった筋トレが出来ます。
体が地面と平行になるぐらい倒すと、かなり負荷を大きくできます。
体を一直線にして傾ける方法ではなく、股関節を曲げて、足を地面に着ける方法もあります。
この方法なら、実際の懸垂に近いレーニングが出来ます。
6.4マシンで出来る懸垂
自重での懸垂以外にも、ジムでマシンを使い、筋力を向上させることもできます。
マシンのトレーニングで筋力を向上させれば、懸垂が出来るようになります。
● ラットプルダウン
懸垂の代わりとしてよく使われるのが、このラットプルダウンです。
ラットプルダウンのマシンは、ほぼすべてのジムに置いてあります。
腹筋はあまり使いませんが、広背筋・背中・肩周り・腕は、懸垂とほぼ同じ筋肉を使います。
バーの握り方を変えたり、パラレルバーのアタッチメントを使うことで、懸垂と同じグリップのトレーニングが出来ます。
● アシストチンニング
懸垂の負荷を減らすための、アシストチンニングマシンもあります。
足を持ち上げる補助をするマシンなので、体の動きは通常の懸垂とほとんど同じです。
置いてあるジムが限られますが、こちらのマシンでも筋力の向上ができます。
効果的な懸垂(チンニング)まとめ
いかがでしたでしょうか?
正しいフォームで、広背筋をしっかり意識して懸垂を行えば、非常に効果的なトレーニングが出来ます。
いろいろなバリエーションもあり、筋力にあったトレーニングを実践できます。
自重での懸垂ができない場合も、負荷を減らしたりマシンで筋肉を鍛えることで、懸垂が出来るようになります。
懸垂で広背筋を鍛えれば、逆三角形の体を作ることが出来ます。
ぜひトレーニングに懸垂を取り入れて、カッコイイ体を手に入れましょう!
この記事のポイントまとめ
● 懸垂は、広背筋を中心に多くの筋肉を効果的に鍛えられる
● 広背筋をメインで使うことが大事
● 腕を下ろす広背筋の力で体を上げる
● 懸垂ができない場合、まずは、負荷を減らしたりマシンで筋力を向上させる
● 懸垂はいろいろなバリエーションがあり、筋力にあったトレーニング・狙った筋肉に効かせるトレーニングが出来る