基礎代謝は、ダイエットでよく注目されるポイントです。
基礎代謝を取り上げた情報もたくさんあり、「基礎代謝を上げることが、ダイエットに成功する秘訣」と言われています。
しかし、基礎代謝の正しい使い方は、ほとんど知られていません。
基礎代謝を上げる方法を試しても、ほとんどの場合、効果がありません。
間違った情報を得て、効果のない方法を実践しても、体は変わらずに終わってしまいます。
この記事で、基礎代謝とは何か、そして、どう活用すればダイエットに成功できるかを紹介します!
この記事は、科学的な知見とトレーナーや医師への指導経験も持つ、プレズ<Plez>のコンサルタントが作成しました。
(ダイエットの結果には個人差があります)
1.基礎代謝とは
基礎代謝とは何か、ご存知でしょうか?
基礎代謝というのは耳慣れた言葉ですが、意外ときちんと知られていません。
トレーナーでも、正しく理解している人は多くありません。
基礎代謝とは、横になって、食べ物の消化・吸収も行っていない時に、体が使うエネルギーのことを言います。
立つ・座るという姿勢を維持する筋肉の働きも、食後の胃腸の活動も含まない、カロリー消費のことです。
基礎代謝とは、何もしないでも消費するカロリーのことです。
基礎代謝には、脳・心肺・肝臓といった臓器の活動や、体温の生成があります。
● 基礎代謝=消費カロリー – 体を動かすカロリー – 食べ物を消化・吸収するカロリー
● 基礎代謝=脳の活動+心肺・肝臓・腎臓などの活動(消化・吸収は含まない)+体温の生成
1.1器官ごとの基礎代謝量
体の器官ごとに、何もしていない時の消費カロリーを、実際に測定したデータがこちらです。
重量 (kg) | 基礎代謝 (kcal) | 1kg当たり 基礎代謝 (kcal) |
|
---|---|---|---|
骨格筋 | 27.2 | 357 | 13 |
脂肪 | 23.9 | 108 | 5 |
骨 | 5.5 | 13 | 2 |
脳 | 1.5 | 360 | 240 |
心臓・肝臓 脾臓・腎臓 | 2.2 | 620 | 282 |
その他 | 12.5 | 89 | 7 |
source:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25293431
※表は安静時代謝なので、基礎代謝より若干大きい数値です。
基礎代謝は、主に、心肺などの臓器と、脳・筋肉が生み出しています。
1kg当たりで見ると、脳と臓器が多くカロリーを消費しています。
筋肉が生み出す基礎代謝は、体を動かすためのエネルギーではありません。
体温を作るエネルギーです。
体を動かしていない状態でも、筋肉が無意識に収縮することで、体温を作っています。
1.2ダイエットでの基礎代謝の使い方
基礎代謝はダイエットで注目されるポイントです。
しかし、間違った説明をよく目にします。
よくあるのが、「摂取カロリーが基礎代謝を下回るといけない」という説明です。
「基礎代謝は生きる上で最低限消費するエネルギー」という意味を、「生きるためには、基礎代謝分のカロリーを絶対に摂らないといけない」と誤解して説明しているようです。
確かに、摂取カロリーを抑えすぎると、健康を害したり、筋肉が大きく減ってしまう可能性があります。
ただ、基礎代謝が、摂取カロリーの下限というわけではありません。
摂取カロリーが基礎代謝を下回っても、必要なエネルギーは、体脂肪から使われます。
そのため、普通、体がエネルギー不足になるということはありません。
摂取カロリーが基礎代謝を下回ると、すなわち、エネルギー不足で健康を損なうという訳ではないのです。
また、「摂取カロリーを基礎代謝以下にしないと痩せない」、というわけではありません。
摂取カロリー<消費カロリーにすることが、ダイエットの本質です。
基礎代謝は、消費カロリーの一部に過ぎません。
基礎代謝より多くカロリーを摂っても、消費カロリーより少なければ、体脂肪は減っていきます。
2.基礎代謝量の計算方法
基礎代謝量の計算には、いろいろな式があります。
中には、精度が低い計算方法や、日本人には合わない計算式もあります。
オススメは、こちらの計算方法です。
source:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/24/5/24_5_1013/_article/-char/ja/
実測値とも近く、クライアントさんに指導してきた経験からも、かなり精度が高い計算ができていると感じます。
体脂肪計などで基礎代謝量を測る方法もありますが、体脂肪計での測定はオススメではありません。
体脂肪計の数値も、実測ではなく、身長・体重などのデータから推定計算をしています。
そして、計算方法は機体ごとにバラバラで、かなり精度が低いこともあるからです。
ジムやエステにある、高額なものでも同様です。
基礎代謝を把握したい場合は、上記の計算フォームがオススメです。
参考記事:基礎代謝量の正確な計算・測定法&効果的なダイエット!
3.基礎代謝量の平均
男女別・年齢別の、体脂肪の平均がこちらです。
男性 | 女性 | |
---|---|---|
12~14歳 | 1,520kcal | 1,410kcal |
15~17歳 | 1,610kcal | 1,310kcal |
18~29歳 | 1,520kcal | 1,110kcal |
30~49歳 | 1,530kcal | 1,150kcal |
50~69歳 | 1,400kcal | 1,100kcal |
70歳以上 | 1,290kcal | 1,020kcal |
基本的に、成人後は、年齢が上がるにつれて基礎代謝量が落ちていきます。
ただ、20代→30代は、基礎代謝量の平均が上がっています。
これは、20代→30代にかけて太る人が多く、平均体重が上がるからです。
体脂肪が増えると、体が大きくなって、空気中へ発散される体温の量が多くなります。
そうすると、自然と体温を作る量が増え、基礎代謝が上がります。
基礎代謝が高いと痩せて、低いと太ると思われがちですが、実はそれほど影響はありません。
20代→30代にかけて基礎代謝量の平均は上がっても、そこから痩せるという傾向はありません。
基礎代謝量が多い人と少ない人を比べた実験でも、太りやすさに特に違いはありませんでした。
根拠論文:Does basal metabolic rate predict weight gain?
基礎代謝は、ダイエットの本質ではありません。
ダイエットの本質は、カロリーです。
基礎代謝はカロリーの一要素でしかないので、これでダイエットが決まるわけではないのです。
実際には、基礎代謝量よりも、習慣の方がはるかに重要です。
参考記事:基礎代謝の平均値&代謝が低くても痩せるダイエット法!
4.基礎代謝量を上げる方法
ダイエット情報では、「消費カロリーの大きな部分を占める基礎代謝を上げると、ダイエットに成功できる!」とよく言われます。
しかし、ほとんどの情報は、効果のない間違った方法を伝えてしまっています。
努力をしているのに痩せないという悲しいことがないように、基礎代謝を上げる方法の真相をお伝えします。
4.1基礎代謝量を上げる方法の真相
基礎代謝とは、何もしない時に消費するカロリーです。
そのため、何かしても、基礎代謝はほとんど上がらないのです。
運動などをして、消費カロリーを上げたとしても、基礎代謝量は上がりません。
基礎代謝を上げられるのは、この2つの方法ぐらいです。
● 体を大きくする
● 室温を下げる
ただ、この方法で痩せるというのは、現実的ではありません。
この方法でも、上がる基礎代謝はわずかだからです。
4.2基礎代謝を上げる方法
20代→30代にかけて、太ることで基礎代謝の平均が上がっているように、体が大きくなると基礎代謝量は上がります。
ただ、「基礎代謝を上げて痩せるために、体脂肪をつける」というのでは、訳が分かりません。
そのため、体を大きくするとしたら、筋肉を付ける必要があります。
そして、ダイエット・フィットネスでも、「筋トレで筋肉を付けて、基礎代謝を上げて痩せる!」というのは、常識のようにもなっています。
しかし、筋肉をやっと1kgつけても、上がる基礎代謝は10~30kcal/日程度なのです。
根拠論文:The underappreciated role of muscle in health and disease.
食事にすると、ごはん1口分にもならないぐらいです。
これで痩せるというのは、ちょっと現実的ではありません。
長期的に太りづらい体を作る効果はありますが、筋肉を付けても、ほとんど体脂肪は減らないのです。
また、室温を下げると、体温の発散が多くなり、基礎代謝量が上がります。
「冬は代謝が落ちる」と思われがちですが、実は、少し代謝が上がるのです。
ただ、室温を下げて上がる基礎代謝はわずかです。
そして、体調を崩す可能性もあるので、こちらも現実的ではありません。
基礎代謝を上げて痩せる、というのはできないのです。
そして、基礎代謝を上げなくても、ダイエットは出来ます。
ダイエットの本質は、摂取カロリー<消費カロリーにすることです。
基礎代謝は、1つの要素に過ぎません。
効果的なダイエット方法を実践すれば、基礎代謝を上げる努力をするよりも、はるかに効率的に痩せることが出来ます。
参考記事:基礎代謝を上げる5つの方法&効果的なダイエット方法!
4.3基礎代謝が下がって痩せなくなる?
「ダイエットをすると、体が生命の危機を感じて飢餓状態になり、基礎代謝が下がって痩せなくなる」と言われます。
ダイエットで停滞期が来るのも、ほとんどの説明で、この飢餓状態が原因だと言われます。
確かに、ダイエットをすると、ホルモンバランスの変化などによって、基礎代謝量が下がることがあります。
しかし、普通のダイエットで下がる基礎代謝は、せいぜい100kcalといったところです。
多いと250~400kcalぐらい下がることもありますが、これだけ下がるのは、停滞など来ないぐらい激しいダイエットをした場合です。
停滞期の本当の理由は、基礎代謝の低下ではありません。
ほとんどの場合、停滞期の原因は、体水分の影響です。
1日で減る体脂肪は、ダイエットをがんばっても100g程度です。
一方、体の水分量は、簡単に1kgぐらい変動します。
体脂肪が減っていても、水分が一時的に増加して、体重が増えることはよくあります。
また、ダイエットを始めてすぐに、糖質と水分が抜けて、体重が1~2kg落ちることがよくあります。
初めに一気に体重が落ちるせいで、その後、体重が減るペースが鈍ったように感じます。
しかし、体脂肪が落ちるペースは、初めから変わっていないのです。
摂取カロリー<消費カロリーを作っていれば、体脂肪は減っていきます。
効果的なダイエットを続けていれば、体脂肪も体重もしっかり減っていきます。
参考記事:体重が減らない3つの原因&3種類の解決ダイエット方法!
5.消費カロリーの計算方法
トータルの消費カロリーは、基礎代謝以外に、体を動かすカロリーと食事の消化・吸収に使うカロリーを含みます。
消費カロリーは、生活の中で体を動かす量によって変化します。
基礎代謝に、生活スタイル別の係数をかけることで、消費カロリーの目安を把握できます。
生活スタイル | 係数 |
---|---|
ほとんど体を動かさない | ×1.35 |
デスクワークなど座位が中心。 通勤・家事で少し体を動かす。 | ×1.5 |
立ち仕事・外回り・家事で かなり体を動かしたり、 軽いスポーツを行っている | ×1.75 |
肉体労働や本格的なスポーツを 行っている | ×2 |
消費カロリーはついつい高く見積もりがちですが、そうすると、管理が甘くなり、ダイエットに失敗しがちです。
できるだけ客観的に自分の生活を見つめて、消費カロリーを計算しましょう。
参考記事:消費カロリーの正確な計算方法&効果的なダイエット法!
5.1 2つのダイエット方法
ダイエットは、摂取カロリー<消費カロリーにすることが本質です。
そして、その状態を作るためには、2つの方法があります。
● 食事を管理して摂取カロリーを抑える
● 体を動かして消費カロリーを高める
基礎代謝はほとんど上がらないので、「基礎代謝を高める」という方法は入りません。
そして、効果的なのは、食事を管理して摂取カロリーを抑える方法です。
体を動かすことも、消費カロリーを上げるので、ダイエットに効果はあります。
しかし、効率的な方法ではありません。
運動は、時間や労力が必要な割に、あまり消費カロリーが上がらないからです。
5.2消費カロリーを上げないダイエット
消費カロリーは、運動をしなくても、日常生活で自然に発生しているものです。
心肺の活動や体温の生成、立つ・歩くといった日常の活動で、常に体脂肪を使っています。
そのため、摂取カロリーを抑えれば、消費カロリーを高めなくても、体脂肪は落ちていきます。
そして、体を動かして1kcal消費するより、食事で1kcal抑える方が、時間もかからず効率的です。
運動の場合、1時間のウォーキングで消費するのが、平均して100~150kcal程度です。
摂取カロリーを抑える方法なら、ジュース200~300mlを水やお茶に代えるだけで、同じ効果を得られます。
運動はわざわざ行う必要があり、体力と時間を使いますが、あまり効果は高くありません。
そのため、なかなか変化が見えず、モチベーションも下がって、途中で止めてしまいがちです。
食事であれば、少し食べる物を変えるだけなので、忙しくても実践できます。
プレズ<Plez>のダイエット方法では、体脂肪は運動ではなく食事で落とします。
効果的にダイエットをするには、運動で消費カロリーを上げるより、食事を変えてカロリーを抑えましょう。
参考記事:ダイエットを成功に導くカロリーの扱い方!
6.基礎代謝・消費カロリーを計算しないダイエット
基礎代謝・消費カロリーを把握しておくと、食事の目安が分かるので、管理をしやすくなります。
しかし、基礎代謝・消費カロリーを計算することは、必須ではありません。
食事を管理する方法は、2種類あります。
その内の1つは、基礎代謝・消費カロリーを把握しなくても、実践できるものです。
6.1食事の目安を設定するダイエット
食事の管理方法の1つは、基礎代謝と消費カロリーを計算し、そこから必要なカロリーを引いて、摂取カロリーの目標を設定する方法です。
1ヶ月に落としたい体脂肪1kgにつき、△250kcalが目安です。
1ヶ月に6kgなど、過剰なダイエットはしないようにしましょう。
1ヶ月に体脂肪を2kg落とす場合、消費カロリーの見積もりが2,000kcalなら、500kcalを引いた1,500kcalを目標にします。
この方法の場合、食事を正確に管理しやすくなります。
しかし、デメリットも2つあります。
1つは、食事のカロリーをある程度把握する必要がある点です。
細かいカロリーの計算は不要ですが、食べるもののカロリーをざっくり把握しておかないと、管理が出来なくなります。
もう1つは、ダイエットの進み具合を見て、調整が必要な点です。
基礎代謝と消費カロリーは、どれだけ精度を高めても、推定に過ぎません。
そのため、ダイエットの進み具合を見て、カロリーの設定を調整する必要があります。
ただ、この調整には、経験が必要になってしまいます。
正確に管理をしやすいので、プレズ<Plez>のダイエット指導では、こちらの方法を採用しています。
ただ、独力で行うにはなかなか難しい方法です。
6.2今までの食事を変えるダイエット
基礎代謝・消費カロリーを計算し、食事の目安を把握しておくと、食事の管理が正確になります。
しかし、消費カロリーの計算が、ダイエットをするために必須というわけではありません。
食事の目安を設定するのではなく、今までの食事を変えて、カロリーを減らす方法もあります。
【○○kcalが食事の目標】とするのではなく、カロリーが高くなっている原因を把握し、それをカロリーが低いものに変えましょう。
例えば、唐揚げをよく食べる場合、チキンステーキに変えることで、油のカロリーをカットできます。
同じ量を食べても、100g当たり約100kcal減らすことが出来ます。
さらに、鶏皮を外すことで、もう100kcalカットできます。
このような方法で、普段の食事からカロリーを減らすようにしましょう。
こちらの場合も、1ヶ月に落としたい体脂肪1kgにつき250kcalを、普段の食事から減らすようにします。
目標を決めるのではなく、必要な分だけ食事を変えるようにすれば、計算や調整を行わず、ダイエットができます。
基礎代謝とダイエット方法まとめ
いかがでしたでしょうか?
基礎代謝はよく耳にする言葉ですが、正しい意味・使い方を説明できている情報は、ほとんどありません。
そして、基礎代謝を上げようとしても、実際はほとんど上がらないので、その努力はムダになってしまいます。
ダイエットにおいて、基礎代謝は上げるものではなく、把握するものです。
そして、基礎代謝を上げる努力ではなく、食事を管理するようにすれば、努力をした分だけ確実に体脂肪が減っていきます。
体質にも関係なく、誰でも痩せることが出来ます。
正しい知識を身につけて、しっかり食事を管理し、理想のスタイルと健康な体を手に入れましょう!
この記事のポイントまとめ
● 基礎代謝とは、何もしなくても消費するカロリー
● 基礎代謝は、ダイエットの1つの要素に過ぎない
● 摂取カロリー<消費カロリーにすることが、ダイエットの本質
● 基礎代謝はほとんど上げることができない
● 食事を管理すれば、基礎代謝量に関係なく、痩せることが出来る
● 今までの食事を変える方法なら、基礎代謝量が分からなくても、ダイエットが出来る